アクロバティック0.75

アクロバティック0.75 第53話(山勢修三)

 こんばんは、山勢です。
 わざわざ、メールありがとうございました。
 オフ会、愉しかったようでなによりです。
 少し考えが変わりまして、私もまたチャットに参加させていただこうかなと思っております。
 そうでもしないと、あなたとメールを交わす理由がなくなってしまうような気がして―――

 実は私、あなたにひとつ黙っていたことがあります。
 それはあなたのことについてです。黙っていたというより知らないふりをしていたと表現した方が適切かもしれません。それに確信があったわけでもなかったですし―――

 奥歯にもののはさまったような言い方はやめましょう。
 はっきり言います。
 おそらくあなたは女性でしょう。しかも比較的年齢の若い方です。
 私がそう思い始めたのはだいぶ前になります。そう、あなたが私宛に封書を送ったことがありましたよね。
 あなたは意図的に書いたのかもしれませんが、そこに記された筆跡からは男性か女性かも判断できませんでした。
 しかし、その行為自体がどうしようもなく女性的だったんです。
 私は最初の段階で自分が初老の男であることを明かしている。そして、あなたに対し積極的にメールを送りつけた。あなたの淡泊な返信に対し、実に長い返事を書きつづけた。
 あなたが男性ならば、なんら警戒することはない。しかし、女性ならどうでしょう?男性に対する警戒心が強く、人並みに被害者意識を持つだけの若さをもつ女性なら―――
 あなたは、私の自宅に無言電話をかけ、しかもご丁寧に封書まで送ってきた。
 だから、私はあなたが若い女性なのではないかと推測したのです。

 敢えてここで断言します。
 私に下心などありません。今まで送った私のメールに嘘偽りは一切ありません。
 ただ、怖かった。
 私のこの考えを明かし、それが真実だったとしたら、ようやく心を開き始めてくれたあなたが再び貝になるのではないかと―――
 あなたからいただいたたくさんのメールを読み返すにつけ、少しづつ私に本音をぶつけ始めていることが窺われます。私はこの関係を壊したくなかった。
 しかし、これからもあなたとメールを交わしていくためには、すべてを語らねばならない、そう思ったのです。

 もし、あなたが男性で、しかもとうの昔から警戒してなどいなかったというのであれば、とんだお笑い種ですが、それならそれでも良いと思っています。あなたがどんな人だろうと、私はあなたを放ってはおけません。とにかく自分の思っていることをもう隠したくはなかった。いや、隠しとおす自信がなかったのかもしれない。
 いつもながら長文ですいません。
 失礼します。


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