アクロバティック0.75

アクロバティック0.75 第56話(ひろこ)

ひろこです

またメールをくださるとは思いませんでした
本当にきりがないので今度こそ無視しようかとも思ったですが、一応返事を出します

>あなたが私に対し不信感を抱くのは尤もなことだと思います。
>ですが、少しだけ待っていてくださいませんか。
>私のことはいつか、近い将来お話しすることがあると思います。むしろ、しなければならないと思っています。

それって、やっぱり、アタシに仲間に入れということですか?
アタシが「あなたと一緒に死にます」って言えばアナタは満足なんですか?
そうすれば、すべてを話してやるということですか?
それとも・・・
それとも、アタシの秘密が知りたいんですか?








アタシは、ある小さな会社で経理の仕事をしています
いわゆるなんのスキルもないただの事務員です
来る日も来る日も数字とニラメッコ、退屈で逃げ場のない日常・・・アタシはきっとそうやって怠惰で意味のない時間を浪費し、やがて老い、そして死んでいくことでしょう
死にたいほどに退屈な日常
欲を抑えることでやり過ごしてきた
そんなアタシが冒険をしました

うちの会社の社長は隠し財産を持っています
税金対策としてのウラ帳簿です
アタシはふとしたきっかけで、それを見つけてしまいました
数千万円ほどありました
少なくともアタシにとっては大金です
アタシはそれを改ざんし、その一部を架空の口座へ流しました
すぐに社長はそのことに気付いたようです
今でも社員の数人に疑惑の視線を送っています
そしてアタシもその中のひとりです
遅かれ早かれ、いつかバレるでしょう
でも、仮にアタシの仕業だと露見しても、それはあくまで不法なお金であり、警察に突き出されることはないと思います

なぜ、アタシがそんなことをしたのか気になるでしょう?
実は、たったひとりの弟が重い病に罹っていて手術費が莫大にかかる、なんてハナシなら美談なんでしょうが、決してそんな理由ではありません
かといって、私利私欲のために、金に目が眩んでやったのかと訊かれるとそれも違うような気がします
しいて理由をあげるなら・・・刺激が欲しかったから、でしょうか
もう、退屈な日常に飽き飽きなんです
うんざりなんです

アナタはきっとこんな三文小説みたいなハナシ、信じたりしないでしょう
アナタをアタシから遠ざけるためにつくったデマカセだと推理するんでしょうネ
別に信じてもらう必要なんてありません
ただ、これだけは言えます
こんな大それたことをやってのけたアタシでも、死ぬことに比べれば造作もないこと
死ぬなんて、そんな恐ろしいことはできやしない
死んだらすべてが無に帰す
何も持たないアタシでも、ささやかながら自分の命は大切にしてるんです
死にたきゃ勝手に死ねよ、バカ!


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