アクロバティック0.75

アクロバティック0.75 第64話(ひろこ)

ひろこです

社長は本気です
アタシの強硬な態度に業を煮やしたのか、警察に突き出すとまで言ってきました
社長もだいぶ焦っているようです
脅しとは分かっていても心臓が早鐘を打ちます
「そんなことしたら、ウラ帳簿のこと、バラしますよ」
ナメられてはいけません
アタシはそう言ってやりました
でも、いくらか声が震えていたかもしれないけれど・・・
そしたら社長、「このこと親御さんは知っているのか?」と、きました
社長はあまり効果を期待してなかったかもしれませんが、これは正直痛かったです
田舎の人間というのは、とても狭い社会で生きています
毎日のように犯 罪が溢れている都会とは大違い
よく言えば牧歌的、悪く言えばなんにもない、それが田舎なのです

アタシは今、福島県郡山市に住んでいますが、実家はきっとアナタも聞いたことがないような小さな村にあります
その村は、常に話題性に乏しく、たとえば福本さんとこの息子さんが離婚したなどという些末な出来事でさえ、村中の食卓の話題にのぼり、それはいつまでもいつまでも語りつづけられるという、ある意味狂った世界なのです
もし、アタシの犯 罪が露見すれば、両親はあの村に居続けることは出来なくなるでしょう
一たび、親に知れれば、その3日後には、村中知らない人は誰もいないといっていいほどにアッという間に伝播してしまう、そういうところですから・・・
彼らは表向きは「気の毒にネエ」なんて同情げに言いつつ、腹の底じゃ「他人の不幸は蜜の味」「最高のオカズ」なんて思ってるのです
半分故郷を捨てたアタシはともかく両親の居場所を追うには忍びない
まさに痛いところを突かれたワケです

これで、逃げ道は絶たれました
選択肢がまたひとつなくなりました
残された選択はひとつ
あとは、死ぬしかありません
でも、その前にヤツの口を塞がなければ・・・


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