或る少年の一日

 




【或る少年の一日】
4月21日午後3時、大阪市某所。
白昼の公園で17歳の少年が4歳の子供をハンマーで殴打するというショッキングな事件が発生した。
子供は命をとりとめ、少年はすぐに自首したが決して衝動的な犯行ではなかったという。
高校を中退した少年は2年間準備に準備を重ね犯行の機会を伺っていた。
鉄製ハンマー、出刃包丁、牛刀、アイスピックなど日ごと凶器を調達しては来たるべきその日をずっと夢想していた。
己を爪弾きにし排斥した学校や社会や人間たちを恨みつつ、世界との接続を断ち、己の存在価値や将来の自分像に震える日々を砂を噛むような思いでやりすごしながら。

そんな少年が一面識もない幼な子の小さな頭に硬い槌を振り下ろした瞬間、彼の脳裏によぎったものは何であったか。
のちに少年は言う。
「通り魔みたいに大量殺戮をしたかった」
殺戮――――
そんな非現実的な小説的ともいえる言葉が口をついて自然に出てくるあたり少年は何事も空想の中だけで楽しむ種類の人間といえたのではないか。
ふとしたハズミだったのだと思う。
周到に計画された犯行もきっと寸止めまで。己にそんな大それたことができるハズがない。心の内ではそう自覚していたに違いない。
ハズミだったのだ。
あるいは少年にとってそんな方法でしか世界との再接続をする術が見いだせなかったのか。
悲しい事件だ。
被害者にとっても加害者にとっても……
公園で遊ぶ子供、無邪気な笑顔の中に覗く穢れなき瞳。
少年は重き槌を振り下ろしたその瞬時に夢から醒めたに違いない。
そして気付くのだ。
これは夢なんかじゃないと。
犯行後、少年はこうも言っている。
「老人以外なら誰でも良かった」と。
老人以外――――
女子供は殺しても構わないが老人だけは殺したくない。
この証言から推して、その孤独な少年にも理解者と呼べる人がどこかにいたのではないかと思わせられる。
世間一般には老人と呼ばれる、お祖父ちゃんか若しくはお祖母ちゃんが……

むろんこれはすべてボクの想像に過ぎない。
現実は小説のように理路整然とはいかないのだから。
真実は少年だけが知っているのだから。
that's all


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