「俺にさわると火傷するぜ」
それがリーダー(仮に【S】としておこう)の口癖だった。
【S】の束ねる集団には争いごとが一切なかった。
なぜなら【S】は圧倒的ともいえる強大な力を持っていたからだ。
リーダーが絶対的な力を誇示すればこそ、その集団は平穏を保っていられるのだ。
無論、【S】を上回るつわものは、きっとどこかにいるのであろうが、上を見ていたらキリがない。
とにかく【S】の存在があるゆえ、この集団が成立しているのは疑いようもない事実である。
リーダーの周りには、取り巻きともいえるの九人の側近たちが控えている。
彼らは、分をわきまえ常に【S】との距離を置いて接し、決して離れることなく忠実にリーダーに仕えていた。
さて、この側近たちにも当然部下がいたりする。
己が小者であることさえ知らぬ若い衆は、時に大ボスであるところの【S】に謀反の動きをみせるやも知れぬが、そこはそれ側近たちが力ずくで若い衆を押さえつけているので、そのようなことは万に一つもありえない。
まあ尤も、リーダーに逆らおうなどという命知らずな輩が仮にいたとしても、【S】にとっては蝿がとまるほどにも感じなかったであろう。
それだけ【S】の存在は大きく、名実ともに集団の中心的人物として君臨しているということなのである。
しかし、あまりに長く【S】の政権が続くと、側近の中にも謀反の火種をその胸の内に灯す者も現れてくる。
その者、仮に【E】と呼んでおこう。
【E】は側近たちの中でも突出して美しく、そして賢かった。
それは今や【S】さえも遥かに凌いでいる。
だが悲しいかな、肝心の力の面では遠く及ばない。
やがて【E】は、そのどうしようもない力の差を知性で補い、リーダー【S】との直接対決を画策する。
もとより【E】には、リーダーを亡き者にしようなどという大それた思惑などない。
ただ己がリーダーになろうとしただけ。
いや、既に己がリーダーであると思い込んでいたに相違ない。
やがて、無謀にも【E】は【S】に対し、真っ向から突撃をかける。
あらん限りの知恵を絞り、リーダーに対抗せんとする【E】。
だが、【S】の一睨みで【E】の先兵はあえなく撃墜。
【E】はそれでも懲りずに作戦を練り直し、第二波、第三波を送り込むもやはり失敗。
結局、【E】はリーダーの懐に飛び込むことすらできず、謀反を断念することになる。
・・・・・・そして再び平和が訪れた。
リーダーの名は太陽。
「俺にさわると火傷するぜ」が口癖だが、本当に触ろうものなら火傷程度じゃ済まされない。
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