真説シンデレラ

真説!シンデレラ


 むかしむかしあるところに、とっても不幸な少女がおりました。名をシンデレラといいます。シンデレラは義母と義姉たちに来る日も来る日も奴隷のようにこき使われていました。そんなある日、シンデレラが、いつものようにけなげに掃除などをしていると義母たちの話し声が隣りの部屋から聞こえてきました。話によると、今度の日曜日、宮殿で舞踏会が催されるとのこと。どうせ私には関係のないことだわ。シンデレラは嘆息とともにそう心の中で呟きました。とはいえ、彼女も女の子です。舞踏会と聞けば目一杯着飾ってダンスのひとつも踊ってみたいものなのです。でも、やはり今の彼女にはとてもそんなことは望めません。
 そして舞踏会当夜、シンデレラは信じられない方に出会いました。そう、もうお分かりですね。魔女さんです。箒にまたがり空からやってくるという実に古典的な登場をした魔女さんが言いました。
「お前さんを舞踏会に行かせてあげるよ」
 魔女さんが杖を一振りすると、すすだらけの服がイブニングドレスに、ぼろ靴がガラスの靴に、かぼちゃとねずみが豪華な馬車に変わりました。
「いいかい、シンデレラ。ひとつだけ忠告しておくよ」
「分かってますわ。魔法の効き目は12時までなんでしょ」
 シンデレラはなかなか物分りのいい娘です。こういうのを一を聞いて十を知るというのですね。
 さて、舞踏会は呑めや歌えやの大盛り上がりです。中でもシンデレラの美しさはひときわ輝いています。シンデレラの豹変ぶりには義母たちも本人だとは気づかないほどです。まさに馬子にも衣装とはこのことですね。(失礼)そんな彼女に王子様が心を奪われたのは言うまでもありません。(でないと話が進みませんものね)シンデレラも日ごろのうっぷんをここで晴らしたためでしょうか、すっかり時間のことを忘れていました。王子様とダンスを踊っているとき、12時の鐘の音を耳にしてやっと気付いたくらいです。シンデレラは長い階段を駆け足でおりていきます。急ぐあまり右足のガラスの靴脱げてしまいました。っていうか意図的に脱いだのです。彼女もこうみえて結構したたかなのです。そして一夜の魔法はすべて解けて元通り。馬車もドレスもガラスの靴も・・・ン?ガラスの靴も・・・?じゃあ、王子様が拾ったであろうガラスの靴は・・・?ご心配なく。御都合主義の御伽噺ですから、シンデレラの残していったガラスの靴だけは魔法が解けることはありませんでした。

 数日後、恋煩いの王子様は、本来業務に忙しい従者たちを全くの私用で引きづりまわし、「ガラスの靴の君」を探しに街を歩き回っていました。ガラスの靴は異様に小さく誰の足にも入りません。しかし、シンデレラだけは違いました。王子様や義母たちの目の前でガラスの靴に足を入れた瞬間、彼女にとってこれはもう胸のすくようなえも言われぬ快感です。シンデレラは当惑顔を装いながら心中ほくそえんでいました。これで奴隷暮らしともおさらばだわ。しかし、王子様は怪訝な顔でシンデレラを見ています。ひとつ言い忘れていましたが、もともとシンデレラの素顔はお世辞ににもかわいいとは言えませんでした。はっきり言ってブサイクなのです。
 そうです。あの夜、魔女はシンデレラの顔にも魔法をかけていたのです。
「確かに靴はあうが、あまりにも顔が違うよなあ」
 王子様の言葉に従者たちもウンウンと頷きます。やがて、王子様はポンッと手を打ってシンデレラに尋ねました。
「あなたがあの夜の方ならば、もう片方の靴を見せていただきたい」
 従者たちからおおーっとどよめきがあがります。そうなのです、足のサイズだけならもっと探せばほかにあう人がいるかもしれない。それよりむしろあの酔狂とも言えるガラス製の靴を持っているということのほうが決定的な証拠になるのです。しかしシンデレラはもう一方の靴は魔法が解けてしまっているので持っているはずもありません。まさに万事休すです。
 そこへ、たまたま道の枯葉を掃いていた一人の娘がこちらの方につかつかとやってきます。シンデレラと違い器量よしのその娘は王子様ににっこり微笑んで、ポケットからそれを取り出しました。
「お探しのものはこれですか?」
 娘の手の中にあるのは、なんとガラスの靴です。もちろんその靴は娘の足にもぴったり収まりました。
「おお、まさしく!」
 王子様は両手を広げて歓喜の声をあげました。一方シンデレラは事の成り行きに唖然としながら思いました。
・・・・・・この娘。どこかで会ったことがあるような気がするわ・・・・・・もしかして、彼女の持っている箒って、空を飛べるんじゃないかしら?・・・・・・


 蛇 足
魔女と聞いて、しわくちゃのお婆ちゃんを想像した方は少なくないでしょう。それが先入観というものです。魔女はシンデレラよりもずーっと若くてずーっと可愛かったんですよ♪


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