ウソつき

ウソつき


 内陸から離れた小さな村の小さな島に、ひとりの男が住んでいました。男はウソつきで村人たちを騙しては困らせてばかりいました。
 それを雲の上からふたりの神様が見ています。ひとりはえらい神様、もうひとりは見習いの神様です。見習の神様は言いました。
「なんて非道い男でしょう。あのような者には天罰を与えるべきです」
 えらい神様がウンウンとうなずきます。
「まったくじゃな。あの手合いは諭したところで分かるまい。いっそ、舌を抜いてしまおう」
 と、まるで閻魔様みたいなこと言うものですから、見習いの神様はびっくりしてしまいました。
「いや、いくらなんでもそれは可哀相です。話せなくなってしまったら懺悔することもできません」
 しかし、えらい神様はそんな言葉に耳を貸そうともせず、下界に降りていくと、これからお前の舌を抜くと、男に宣言してしまいました。もうウソはつきません、悪さをいたしません。男は涙ながらに謝りましたが、神様の許しを得ることはできません。
 男はついに、舌を抜かれてしまいました。

 数日後、見習いの神様はえらい神様に会いにいきました。男を許してもらうためです。
「今ごろあの男はきっと反省しています。どうか元通りにしてあげてください」
 えらい神様は涼しい顔で応えます。
「その必要はない」
「しかし・・・」
「ときに、あの男、今どうしているか知っておるか?」
 見習いの神様は、とんでもないというふうに首を横に振りました。男が気の毒でとても見てはいられなかったのです。
「ならば、見てくるがよい」
 しぶしぶ様子を見に行くと、案に反して男は元気を取り戻し、言葉を喋っているではありませんか!しかも心を入れかえてか、今までのようにウソをついたりはしていません。
「なるほど、既に元通りにしてもらっていたのか」
 えらい神様のご慈悲に納得しているところへ当の本人が現れて言いました。
「いいや、わたしは何もしておらんよ」
「ばかな。あなたがウソをついてどうするのです。現にあの男は・・・」
 舌を抜かれて喋れるわけがなく、にもかかわらず喋れるうえにウソつきまでなおっている・・・。見習いの神様は眉根を寄せてしばらく考え込みました。
「あっ!」
 見習いの神様もようやく気がついたようです。そうです、男は二枚舌だったのです。


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