誘拐

誘 拐


「はい、もしもし」
「金は、一億は用意したか?」
「用意した・・・娘は無事なんだろうな」
「安心しろ。娘に会いたければ、3時に○×レジャーランドまで金を持って来い。それと警察にはくれぐれも連絡しないことだ」 
「娘の声を聞かせてくれ」
「駄目だ」
「頼む」
「二度は言わない」
「どうしても駄目なのか?」
「くどい!」
「・・・」
「・・・」
「じゃあ、金はやらん」
「なっ、な、何だと!」
「先ほどから気になっていたのだが、私から金を貰う立場にある君に、そんな高飛車な態度にでられるのは甚だ不愉快なのだ。切るぞ」
「ま、ま、ま、待て。分かった。いま娘を出す。切るなよ。いいか絶対に切るなよ」
「お父様、助けて」
「おお、大丈夫か。ひどいことされてないか」
「おっと、ここまでだ。聞こえたか?聞こえたな。ようし、今度はこっちの言うとおりにしてもらおうか」
「もうひとつ」
「何だ!」
「そう大声をださんでもいい。充分聞こえている。ときに物は相談だが、どうだろう、金の引渡し場所を変えてはもらえんかな。どうも、この歳で遊園地というのもいささか気恥ずかしくてならん」
「この・・・ふざけやがって」
「君!私はいたってまじめだ。それとも君はこの状況下で私が冗談を言うとでも思っているのかね?君はまじめと冗談の区別もつかんのか?一体、どんな教育受けてきたんだ。失礼だが君の学歴は?いやいや、言わんでいい。聞かずともおおよその見当はつく」
「このやろう!黙って聞いてりゃ・・・くそっ!馬鹿にしやがって。場所は変えねえ。ぜーったい変えねえぞっ!!」
「なるほど。そちらにはそちらの都合なり段取りなりがあるというわけだね。よかろう。ここは私が折れよう」
「・・・お、おお、分かりゃいいんだ、分かりゃ。それで受け渡しの条件だが・・・」
「ちょっと待ちたまえ」
「何だ!!まだ言うか!!」
「まけたまえ」
「・・・な・・・に??」
「考えてみれば一億は高すぎる。もっと安くしたまえ」
「貴様、いい加減にしろよ。娘がどうなってもいいのか!」
「君は娘が何歳か知っているのか?」
「・・・関係ないだろ!・・・10歳くらいか?」
「17だ」
「・・・(絶句)」
「背も低いし、幼い顔立ちだ。小学生くらいに見えても無理もない」
「そ、それがどうした。娘は娘だろうが!それがどうしてまけろという話になるんだ、ええ?」
「さっきは私が折れただろう。今度は君の方が折れる番だ。君は知らんだろうが、うちの娘は見てくれは親に似て、なかなかのものだが、性根は腐りきっておる。麻薬に手を出し高校を中退、その後、怪しげなところに出入りし、帰らない夜も数多。それからしばらく行方不明で、ふらりと帰ってきたかと思えばヒモ付きで、おまけに子供を二人も堕ろしていると言う。そして今度は誘拐されただと。まったく、どこまで親に迷惑をかければ済むんだ。そうだ、この際君に処分を任せるとしよう。うむ、我ながら名案だ。そういうわけでよろしく頼むよ。では」
「お、おい、待て、待てよ。待って下さいってば・・・おい、返事を・・・おい」
 ツーツーツー


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