トモくんの生活と性格

LESSON11 トモくんの最期


「ドライブにでも行かないか」

「珍しい。どういう風の吹き回し?」

「うん、ちょっとね。今夜はボクが運転するよ」

相手がボクに限らず、自分で運転しなければ気がすまない性格の彼女

断られるかなと思いきや、トモくんはあっさりと了解した

「しょうがないな、命預けてみるか」

「大船に乗ったつもりでどうぞ」

少々ハイなボクは芝居がかった仕草で、トモくんのためにうやうやしく助手席のドアを開けてさしあげる。

シートベルトしめて

ヘッドライト点灯

出発進行!!

空いている道を意識的に選択しながらハンドルをきっていく

ボクは目一杯アクセルを踏み込む

加速する
加速する
加速する

「もしかして、死ぬ気?」

「たぶん」

彼女は前を向いたままきっぱりという

「付き合うわ」

「ありがとう」

ああ、恥ずかしい

声が震えてしまった

彼女はこんなに落ち着いているというのに

ボクはあるいは大それた事をしようとしているのかもしれない

これはエゴなのか?

やがて車はガードレールを突っ切って・・・

ボクらは死ぬ、確実に

あの冷たい海に飛び込んで

溺死?ショック死?凍死?窒息死?

まあ、どれでもいいけどね

いずれにしろボクは守ったんだ

守り抜いたんだ

ボクらが大切にしているものを

後悔なんかしてないさ

ボクも彼女も「命」なんてどうでもいいものなんだ

石ころ同然

大切だなんて思ってない

大切なのは「永遠」

腐ったバナナは醜いし

腐った牛乳は飲めたもんじゃない

こうしてボクらは「永遠」を手に入れる

巨大な水柱

飛び散る水飛沫

頭の中が空っぽになる

この車のローンって誰が払うんだろう?

それにしても冬の海は冷たいね

氷の中に閉じ込められてしまったみたいだよ

さあて、お立会い!

ご都合主義の小説や映画とは違う

ボクらは死ぬ

ボクらの魂は今まさに浄化される

さようなら

さようなら

ねえ、トモくん

地獄はどっちかな?


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