LESSON2 トモくんの性格
いろんな意味で正反対のボクとトモくんはかれこれ4年の付き合いだ
4年といっても2人の関係にはひどく波があり、互いの部屋に数週間泊まったり、ときには季節が変わるまで、会うど
ころか電話一本かけないこともある
そういう不安定な状況をよしとするきらいがお互いにあった
美大出身の彼女は、親のコネで地元ではそこそこいい企業に就職している
ボクも月給取りだが、2つ下の彼女のほうがボクより収入が多い
ボクらは生活をともにする上で、『何でも平等』を理念にしている
それは暗黙の了解というやつだった
食事だって交代ばんこで作る
彼女はボクの作った料理をおいしいと言ってくれる
彼女は基本的にボクにはお世辞を言わない人だから、きっとそれは本当のことなのだろう
でもボクはお世辞を言う
あまりおいしくなくてもおいしいと言ってしまう
それが礼儀というかマナーだとボクは思っている
さっき電話すらしなくなることがあるといったが、それは多分に彼女のほうに原因がある
彼女は大の電話嫌いなのだ
相手の顔を見ずに話すことが苦手らしい
本人曰く「用件のない電話は無意味」とのこと
電話で話すトモくんはいつも不機嫌そうな口調で、電話をかけたこちらとしてはとても悪いことしたような気になってしまう
逆に面と向って話すときの彼女はたいてい上機嫌で饒舌である
射るような目でボクの視線を捕まえて離さない
ボクはそんな彼女の視線に居心地の悪さを感じ、逃れるように彼女の喉のあたりを見ている
本人は否定するかも知れないが、そんなボクらには決定的な3つの共通点がある
それが、ボクらの関係を持続させるバックホーンになっていることは間違いないと睨んでいる
芸術家気質である
恋愛に淡白である
常識を嫌悪しながら、極めて常識的に生きている
ボクはきっと彼女と結婚することはないだろう
でも一緒に死ぬとしたら、相手は彼女しかいないだろうと思う
こんなこと彼女に言ったらどんなリアクションが返って来るのだろうか?
一笑にふされてしまうか、あるいはあの真っ直ぐな視線で「じゃあ、一緒に死ぬ?」なんて言われたりしてね
正直なところ、どっちの答えが返ってくるかは五分五分のような気がする
お互い、ひとつづつヘビーな問題を抱えて生きているから・・・
どちらかが〈それ〉に押しつぶされそうになったら、一緒に〈それ〉を退けようとするか?それとも自らも重石となって、一思いにピリオドをうってしまうか?
まあ、それはそのときの彼女のコンディションに委ねることにしよう
どうせボクの人生、半分は終わっているんだ
残りの半分はトモくんのために使ってあげてもいいかな、なんて殊勝なことを考えたりする冬の夕暮れ
片っぽしかない羽根でもがく畸形のボクら
肩を寄せ合ってやっと飛べる
二つの羽根を持つ人たちが今日も眩しく感じる
ああ、なんてことだ
街には天使が多すぎる
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