アクロバティック0.75

アクロバティック0.75 第11話(山勢修三)

 こんばんは。
 深夜、家族は眠りにつき、私はひとりパソコンに向かい、これから試験問題をあげてしまおうというところです。

 さて、あなたは私の過去に興味がおありのようですね。
 私にとってその事件は、強力なシールのように、頭の中に鮮明に貼りついて片時も離れることがありません。いや、忘れてはいけないことだと思っています。私が生き続け、彼のことを想い続けることでしか償うことができないとさえ思っています。若くして他界した教え子のぶんも生きよう。利己的な発想かもしれませんが、私にできることといえばきっとそのくらいのものなのでしょう。
 もしも耳(目)を貸していただけるのなら、今度そのときのことをお話したいと思います。
 あなたのこれからの人生に少しでもお役に立てるのなら、封印した忌みしき過去を紐解くのも悪いことではないと私は考えています。
 私はもう初老と呼べる域に達していますので、おそらくあなたよりは人生を長く歩んでいるはずです。
 まあ、小学校の教師で五十代後半なら普通は教頭か校長になっているのでしょうが、「事件」のこともあって未だに平の教員です。尤も、私のような者を雇ってもらえているだけでもありがたいことであり、依願退職もせず恥をしのんで教員を続けている自分もまたつらいところなのですが。
 誰しもことの大小の違いこそあれ何らかの問題を抱えているもの。
 どうかあなたも運命に負けないでください。
 それでは、またメールします。
 明日のあなたが元気であることを願っています。

   山勢修三


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