アクロバティック０．７５

アクロバティック０．７５　第７０話（ひろこ）

ひろこです
ちょっと状況が変わってきました
今日、社長が折れたのです

あの金は返さなくていい、警察にも突き出さないと向こうから歩み寄ってきたんです
ヤツの提示した条件・・・
　・　ウラ帳簿の件は他言しないこと（といいつつ、アナタにはこうして他言してるんですが・・・）
　・　ウラ帳簿のことで自分を強請ったりしないこと（もともと金が欲しくてやったワケじゃないっての）
　・　会社を依願退職すること（邪魔者は消えろってことネ）
以上３点です
昨日、ウチの会社に税務署が入ったらしいのですが、その辺になにか関係しているのかも知れません
アタシは迷いました
社長室のふたりに沈黙が流れます
やがて社長室のドアが開き、社長の奥様とお孫さんが入ってきました
するとどうでしょう、さっきまで苦虫を噛み潰したような社長の顔がパッと晴れて、孫を抱き上げ目尻を垂らしているではありませんか！
そんな姿は、びっくりするくらいふつうのおじいさんです
アタシは急速に何かが萎えていくを感じました
最悪、殺さねばと思っていたヤツですが、殺す必要などないな、と思い直しました
だって、そうでしょう？
イヤなヤツだけど、少なくとも家族からは必要とされているんだから・・・

アタシは誰からも必要とされていない
両親もきっと故郷を捨てたアタシがいなくなれば清々することでしょう
もう思い残すことはありません
理由さん、アタシはいつでも飛べます

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