第3章


第3章  説明会

「10時だ」
 螺子目の言葉で室内に緊張が走った。
 間をおかず食堂のドアが開き、3人の男が入室してきた。先頭を切って入ってきたのはグレーのスーツに身を包んだオールバックの男。年齢は40歳前後といったところか。そして彼の後ろには既に何度か見ている黒服の大男ふたりが控えている。彼らをたとえるなら極道の若頭と取り巻きのボディガードといったところか。ただそれと明らかに違う点は3人ともインカムを装着しているということ。
 オールバックの男はまっすぐ暖炉の前の席、上座に腰を下ろした。黒服の男たちは脇を固めるようにオールバックの男の両脇に立っている。
「あんたが【代理人】か?」
 松本が口火を切って上座の男に尋ねる。
「はい、私が【代理人】を務めさせていただきます山口維知雄(やまぐちいちお)と申します。以後お見知りおきを……後ろの二人は【代理人助手】です。【代理人助手】は全部で20名おりますので、あえて紹介は割愛させていただきます。ちなみにこの館にはゲームの関係者以外の者は一人もおりません。つまり、この建物の中には、皆さまがたゲスト10名と私、それに【代理人助手】20名の計31名がいる、ということです。さて……あ、ちょっと失礼」
 インカムに何か連絡が入ったらしく黙して耳を傾ける山口代理人。短い沈黙のあと彼は全員に向かって言った。
「最後のゲストがおいでになったようです」
 言い終わらないうちにドアが開くと20代前半と思われる長身の女性が入ってきた。
「あの……まだ間に合いますか?」
 誰にともなくおずおずと尋ねるそのしぐさはすこぶる陰気な印象を与えたが、よく見ると素材そのものは美人の部類に入る。最後の構成員候補は森岡千夏(もりおかちなつ)という女性だった。
 山口代理人が唯一空いた席を勧めながら、
「構いませんよ。まだゲームは始まっていませんので多少のことは目を瞑りましょう。ですがひとたびゲームが始まれば一秒の遅れが文字通り命取りになりますので、どうぞお気をつけて……それでは全員お揃いになりましたので説明会をはじめさせていただきます」
 室町、ため息とともに呟く。
「全員、揃てもうたんやな」
「何か問題でも?」と、いぶかしげに首をひねる山口。
「いや、白状するとな、俺は心の隅で全員揃わなかったらええなあなんて思てたもんやから……」
「念のため申し上げておきますが、これは強制参加ではありません。替りの参加者なら外の車で待機しておりますので、どうぞ気兼ねなくお引き取りいただいて結構です」
「やっぱり替えはいたんだ!」
 美結が全員の気持ちを代表してそんなことを言う。
「もちろんです。尤もここにいる皆さんが全員ゲームに参加されれば、待機している方にはそのままお引取りいただく手筈になっていますが……さて、どうなさいますか?」
 誰も何も言わない。言いたいけれど言えない空気がそこにはあった。山口が満足げに頷く。
「規則を読んでいただいてお分かりのように、これから行われることは場合によっては命さえも落としかねない極めて危険なゲームです。皆さまは既に規則を読まれていると思いますので、くどくど復唱するのはやめてゲームの内容を簡単にご説明することにします。まず、これから誓約書を書いていただき、正式にゲームに参加していただきます。この行為により正式な構成員となった皆さまの最初の作業がくじ引きになります。ここで【犯人】と【被害者】に分かれていただきます。【犯人】となった方は他の9名、つまり【被害者】たちを誰にも悟られぬように殺 害していきます。1名死亡につき賞金1千万円です。なお、規則違反で私どもに葬られる場合でもやはり【犯人】には1千万円が入ります。こうして【被害者】全員が死亡すれば最高賞金9千万円となるわけです。犯行にあたっては、【代理人】である私が共犯者となって【犯人】を全面的にバックアップします。但し、規則にある通り【代理人】の行動には縛りがあります。第一に共犯者という立場での殺 人は行わない、第二に殺 害計画そのものに知恵を貸すようなことはしない、第三に凶器の調達はしない。ですから凶器はこの会場内にあるものを使っていただくということになります」
「そりゃそうだ。【犯人】がもし機関銃を調達してくれなんて言ったら【被害者】はもうお手上げだ。推理もへったくれもねえ。丸腰の【被害者】をまとめて蜂の巣にすりゃいいだけだもんな」と、松本が応じる。
「あくまで知的ゲームってわけだね」と、螺子目。
「でも、まったく体力が要らないって訳じゃないわよ。女性や子供、老人にはどうしても不利だわ」と、これは美結の台詞だ。
「そう判断されるなら、何度も言うようですがゲームを下りていただいて結構です」
「あたし、別にやらないとは言ってないわ」
 山口の呼びかけに美結が慌てて弁解する。どうやら彼女はやる気満々らしい。
「でも、そうなると【代理人】がする共犯者としての仕事って何なのよ?」
 美結の質問はごもっともな話だった。コロシもやらない、計画にも参画しない、凶器の調達すらしない。普通の犯 罪を考えれば共犯者としての役割などほとんどないということになる。何が全面的バックアップだ、である。
「これは普通の犯 罪ではありません。独自のルールに基づいたゲームです。共犯者の利用方法は【犯人】になった方が考えていただければいい。ただ、逆に言えばこの三つ以外のことは何でも命令できるということです。もっとも【代理人】は【犯人】の共犯者であるとともにゲームの審判員のような役割も担っているわけですから、規則そのものを侵すような指示には従いません。つまりは言うまでもなく【犯人】にとっては【代理人】をいかに活用するかが勝利の鍵を握るということになるわけです」
 山口はここまで言って一息ついた。
「さて、今度は【被害者】についてです。【被害者】となった方には、自分の命を守りながら【犯人】を当てていただきます。これを告発と呼びます。告発は会期の三週間の間いつでも行うことが可能です。論理的に看破するもよし、山勘で当てにいくもよし、とにかく【犯人】が誰であるかを当てればいいわけです。但しチャンスは一回きりで早い者勝ち。賞金はそれまで【犯人】が獲得した額面がそのまま移行します。たとえば【犯人】が3人殺し、3千万円獲得していたところで告発を成功させれば、その方は3千万円もらえるというわけです。と同時に告発された【犯人】は即刻ペナルティ。そしてゲームは終了。それと特に注意していただきたい点ですが、規則には数々の義務行為、禁止事項があります。〜しなければならない、〜してはならない、という類いのものです。これらはすべてペナルティの対象になります。そしてそれらのペナルティは例外なくすべて死に直結しています。ペナルティの執行は規則をご覧のとおり私どもが行います。【犯人】にとっては自分の手を汚さずに賞金を手にすることができるわけですから、実においしいルールということになりますね。いずれにせよこのゲームを勝ち抜くには何よりも徹底的に規則を読み込むことです。規則上では必勝法こそないでしょうが、穴や抜け道、ゲームを有利に進める手段は沢山隠れているはずです
 あちこちからため息が漏れた。呆れるほど非現実的な話をここまで理路整然と説明されると、現実感や道徳感、そして罪悪感に至るまで麻痺してしまう。残るのは深い谷底を見つめるような恐怖感のみだ。山口は更に続ける。
「ゲーム開始まであまり時間もありませんのでここで質問を受け付けたいと思います。何かございますか?」
 場が凍りついたようだった。皆、聞きたいことは山ほどある。しかし何から聞いたらいいものかと悩んでいるようだった。やはりここでもはじめに口を開いたのは松本浩太郎その人だった。
「何より一番始めに聞きたいことはやっぱアレだな。つまり賞金は本当に貰えるのかってことだ」
「無論です。規則に嘘偽りは一切ありません。ただ、それを証明しろと言われても、どうすることもできませんが。繰り返しますがこのゲームの賞金は最高9千万円です。決して安い金ではない。それでも私ども主催者側では損をしない仕組みになっているんです」
「何やそれ。どういうこっちゃ?」
「規則に記してありますが、ここで行われることはすべてビデオに収められています。このビデオ結構な高額で取引されるのです」
 衝撃的な事実だった。自分たちの殺される様を第三者が鑑賞するだって! 松本は冷や汗を流しながらも、それでも無理に強がってみせた。
「だからコロシはビデオに映る範囲でやれってことか……けっ、胸糞悪い。金持ちに悪趣味な奴が多いっていうが、そこまで糞だとはな。で、俺たちの命いくらで売れるんだ?」
「それは申し上げられません。いや、むしろ聞かないほうがいいでしょう。ただ一つ言えることは、ビデオの売上額から見れば9千万程度の額は微々たるものだということです」
「へえ、あるところにはあるもんだな、金ってやつはよ。リスクの少ない胴元が丸儲けってのは気に食わねえが、まあ、世の中そんなもんだろ。いつか自分があんたらの立場になればいいだけのことだもんな」
 松本はすうーっと息を吸い込んで肚を決めた。
「オッケー、分かった。俺はやるぜ」
「では誓約書にサインをお願いします」
 ずっと後ろで控えていた【代理人助手】がペンと朱肉を持って松本の席に近寄る。ゲストたちが青ざめた顔で見守る中ペンを受け取ると、松本はまるで生命保険の約款のように小さな文字でびっしりと埋められた誓約書をピンと指で弾いてみせた。
「ちっ、念がいってやがる。この誓約書、読むのが面倒くさいぐらいいろいろ書いてっけど、要するに主催者は俺が死んでも責任はとらねえぞってことだろ」
「大筋ではそういうことです。ですがあまり堅苦しく考えないでください。バンジージャンプやスカイダイビングをするときもこういったものを書かされることがあるでしょう」
「おいおい、それはちっと違うんじゃねえか」、などと文句を言いながらも彼の左手は書き慣れた自分の名前を綴っていた。そして拇印を押す。
「拇印なんて初めて押すぜ。まるで犯 罪者にでもなった気分だな」
 松本は自分で言ったジョークが気に入ったらしく、ひとり渇いた笑い声を上げた。
「どうも釈然としないな」
 松本が拇印を押したのを見て、酔いどれてすっかり赤ら顔の平がひとつの疑問を口にした。
「この誓約書に一体どんな意味があるんだ? どうせ死人が出たところで、あんたら闇から闇に処分してしまうんだろう? 誓約書ってな、裁判沙汰にでもなったときに初めて効力を発揮するものだ。しかしこのゲーム自体が違法行為だ。誓約書があろうがなかろうが万一ここで行われたことが明るみに出れば、あんたらもただじゃ済むまい。つまりはこんなものあえて書かせる必要なんてないってことだ。違うかね、山口君よ」
 ここまで立て板に水の如く応答していた山口が口を閉ざしてしまった。その件については答えるつもりはないらしい。客たちの中に疑念が広がる。平の言うことは至極もっとものこと。ならば何故わざわざこんなものを書かせるのか。
「失踪宣言でしょ、これは」
 山口の説明をずっと黙して聞いていた菅野が誓約書の必要性を推理した。
「皆さん、誓約書を見てください。印刷された文面と署名欄の間に少し空白行があるでしょう。これはこれで特に不自然ではないのですが、皆さんが署名したあとでこの空白行に、たとえば『諸事情により私は失踪します。私はこれから行方をくらましますが自殺などではありません。新天地で身を隠して暮らしていきたいと思っていますので、どうか探さないで下さい』みたいなことをワープロで打ち込んで、そこから下を切り取って家族などに送りつけるんです。そうすれば、たとえ捜索願が出されても警察は捜さないではないが、少なくとも力を入れて捜査することはないでしょう。失踪人なんて世間にはゴマンといる。そんなものを警察がまじめに捜していたら警官は何人いたって足りないでしょう」
「なるほどな、私たちはこれから長くて三週間、世俗を離れて生活するわけだ。主催者側としてはそのくらいの予防線を張っておくのは当然のことだな」と、平は納得した。
 山口代理人は否定も肯定もせず口をつぐんでいる。これには松本も黙っちゃいない。バンとテーブルを叩いて山口を指差し罵倒する。
「汚ねえぞ、コラ! 何が誓約書だ。新天地で身を隠して暮らしますだぁ? そんな人生の敗北者みてえなみっともねえこと俺はご免だぜ」
「何をムキになっているんだ、君は? 別にいいだろう。生きて帰れさえすれば周りの人たちには失踪は冗談だったとでも言ってやればいい。反対に生きて帰れなければこれはまさしく名実ともに敗北者ってわけだしね」
 生きて帰れなければ……
 菅野は恐ろしいことを平然と言ってのけた。その顔にほとんど表情はない。
「ペテン師が!」
 松本が吐き捨てるように言う。その言葉は山口だけではなく菅野にも向けられていた。
「分かってたんなら俺が署名する前に言えよな!」
「言ったところで君がゲームを下りるとは思えないがね」
 松本は奥歯をぎりりと噛み締めて、菅野を噛みつかんばかりに睨みつけた。
「あんた、ヤな奴だな」
「君ほどじゃないだろう」
 と、火花を散らす二人を横目で見ながら山口がテーブルに身を乗り出す。
「別に私を信用しろとは申しません。どうとらえていただいても結構です。いずれにせよゲームに参加しない方は、このままお引取りいただきますので。しかし少し考えていただきたい。もう既にあなた方は私たちの手の中にある。この会場には20人からの【代理人助手】がいる。皆屈強な大男たちです。勝手に逃げ出すことはまずもって不可能。端的に言えばこの場で全員を殺してしまうこともたやすいのです」
 山口がスーツの内側を開いて見せると一同は彼のわき腹に収められたモノに釘付けになった。それはあまりにも非現実的でおそらく誰もがテレビなどでしか見たことがないシロモノ、拳銃であった。鱒沢遙がひっ、と短い悲鳴を上げてのけぞった。室内にざわめきが走る。山口はすぐに銃を隠して、
「それでもビデオは完成するし、賞金だって払わなくていい。だが、現に私たちはそれをしていない。やる気になれば銃で脅して署名させ、すぐにでも殺すことが出来るというのに」
 そうなのだ。ここにいる10人のゲストはいろいろと選択権は与えられているものの、真の自由意思は認められない状況にあるのだ。言わば餌を与えられ生き長らえながらも、カゴからは決して出してもらえぬカナリヤのようなもの。
「これは救済なのです。自分の命が1千万円ですよ。命は金に代えられないなどというものは妄想に過ぎない。命は売り買いできるのです。チップの代わりに命を張るんですよ」
 山口の弁に感化されたか、伊勢崎美結が震える声で言った。
「そうよ。そうなのよ! 分かりきったことなのよ。こんなチャンス滅多にない。や、やってやるわよ。やめたい人はさっさと帰って! あたしはやる。生きたまま死んだような生活はもう沢山よ!」
 美結が迷いを振り払うようにペンを走らせ署名を完了する。2人目の構成員だ。
 しかしそこから先、誰もペンを取ろうとはしない。ただ無機質な時間だけが流れていく。堪らず松本が席を立ってテーブルのまわりを歩き始める。
「どうした? ぶるったか? 誰も書かないのか? 人を殺すのがそんなに悪いことか? あんたら毎日、肉や魚を食ってるだろ。それもこれもてめえの命を繋ぐためだろうが! 食わなきゃ生きていけねえんだよ」
 妙な説得力があった。鬼気迫るものがあった。何か得体の知れない媚薬が室内に漂い始めている、そんな感じだ。
 やがて獣のような松本の視線にぶつかった螺子目がふっと笑った。
「私はもう心は決まっている。ちょっと様子を見ていただけだよ。迷いはない。私も署名する」
 つられるように室町もペンをとる。
「そうやな、【犯人】さえ引かんかったら誰も殺さずに済むわけやしな」
 続いて平が空になったポケットウイスキーを逆さに振って落ちてきた雫をなめながら、
「その確率はわずかに10%。まずもって【犯人】になることはあるまい。どうせ人間いずれは死ぬんだ。それが下手打つと少しばかり早まるだけのことだ。まあ私は別に【犯人】でも【被害者】でもどちらでも構わないがね。ところで山口君、アルコール類は絶対に切らさないでおいてくれよ。私は一日でも酒が切れると気が狂いそうになるんだ」
 螺子目、室町、平と次々に署名する。これで5人。半数の参加者が確定した。ここで鱒沢遙がおずおずと手を上げる。
「規則の最後のほうに書いてある『死をもってペナルティ』って具体的にどんな死が待っているの?」
 遙も目の前の金を必要としている人間の一人だが、やはり死は怖い。あまり聞きたくないことだが、聞かなきゃ聞かないでやはり自分の人生の最悪の結末は気になるところだ。
 幸いこの質問には快活に答えてくれた。
「そうですね。これは皆さまにもよく覚えておいていただきたいことですが、私をはじめ【代理人助手】も全員拳銃を携帯しています。3階では【代理人助手】がビデオカメラで皆さんの行動を監視していますので、規則違反者が発生した場合、このインカムで全員に指示が入ります。違反者を消去せよ、と。しつこいようですが、そうなれば逃げることは出来ません。仮に万一逃げおおせたとしても私たちは一生かけてでも違反者を追いつづけます。それだけの組織力がこちらにはあるということです」
「……分かったわ」
 遙はごくりと生唾をのんだ。
「ホントに嘘じゃないでしょうね。ゲームに勝ったら本当にお金くれるのね? 無事に帰してくれるのね?」
「お約束します」
 遙は震える手でペンをつかんだ。が、しかし、すぐにその手がとまってしまう。
「ねえ、山口さん。このゲームってあたしにも勝てるチャンスがあるかしら?」
「チャンスは平等です。私どもが練りに練って作り上げたゲームですから」
 そこまで後押しされても遙はまだ暗く深い鬼畜の海へと飛び込めないでいた。
「あなたは署名しないの?」
 遙は救いを求めるように自分と同年輩か或いは年下と思われる菅野祐介の方を見た。誰かと一緒に署名をしたいという心理はごく自然なことだった。特にも遙は人一倍寂しがり屋の典型的な他者依存型の女性だ。
 誰か、誰でもいい、自分の背中をもうひと押ししてくれる人が欲しい。たとえその先が破滅への扉であったとしても……
 果たして菅野はまるで宅配便の受け取りサインでもするかのようにあっさりと署名して見せた。
「勘違いしないでください。この世に平等なんてありえない。けれど事はあなたに有利に働くことだってある。先のことは誰にも分からないけれど、可能性が全くないということもこの世にはありえないんですよ」
「……ありがとう、菅野さん」
 遙はきゅっと唇を噛みしめペンを走らせた。彼女の涙が誓約書を濡らしていた。
 松本浩太郎、伊勢崎美結、螺子目康之、室町祥兵、平一、菅野祐介に続き、7人目の構成員誕生である。
 先ほどからこまめにメモを取っていた菅野が山口に問い掛けた。
「山口さん、このゲームは過去に行われたことがあるんですか?」
 この問いに対し山口は出来のいい生徒を誉める教師のように満足げに頷いて、
「なかなかいい質問ですね。過去の実績を知ることは肝心なことです。ですが、答えはノーです。もっとも殺 人ビデオについては以前よりさる方々より強い要望があったものですから、好評であれば今後も定期的に実施していくつもりです。しかし初めてだからといってゲーム自体杜撰に作られたということは決してありません。私どもが多方面からシミュレーションを重ね、試行錯誤のうえ完成させたものなのですから。とはいえ、どんな不測の事態が起こるとも限りません。そこで規則には11の1項として『ゲームの運営上、規則に矛盾等が発生した場合、その都度【代理人】が状況を判断し、最も適切と思われる処置をとることとする。』という項目を設けさせていただきました。ただこの項目が使われることはまずないと思います。すべては規則に過不足なく定められているはずですから。人間の剥き出しの欲望のなれの果て、それがこのゲームなのです。いや、最後のは全くの私見ですが……さあ、時間も少なくなってきました。他のお三人さまはどうされますか?」
 数馬がおずおずと手を上げる。とろんとした目は今にも眠ってしまいそうだ。
「僕、あまり頭よくないから分かんないんだけど、たとえば【犯人】が人を殺していって、全員殺してしまうとするよね。そうすると最後の方で二人だけが残るって時があると思うんだけど、そうすれば【犯人】じゃない方はもう一人の方が【犯人】だってすぐ分かっちゃうんじゃないかなあ」
「あ、ホンマや、少年の言うとおりや。みんな殺されてって最後に二人だけ生き残ったりしたら、生き残った【被害者】は簡単に【犯人】を告発できることになるで」
「うむ、確かに言ってることは尤もだ。【犯人】は多く殺せば殺すほど、それだけ賞金は増えていくわけだけど、あまり殺しすぎると容疑者を絞り込んでしまうことになる。つまり一人死ぬごとに容疑者9人だったのが8人、7人と減っていくわけだから、当然【犯人】が告発される可能性も高くなってくる。殺 人は4・5人ぐらいでやめておくのが無難かもしれないな」
「何だよ、結局賞金9千万は絵に描いた餅かよ」
 室町、螺子目、松本が口々に数馬に同意の意を示す。山口はまただんまりを決め込んだ。おそらく教えなければ知ることが出来ない情報は与え、考えたり推理すれば分かるような情報は与えないということなのだろう。つまり、この件は後者にあたるわけだ。
 本当に賞金9千万円は絵に描いた餅なのだろうか……
「やる気になれば可能なんじゃないかな、賞金9千万も。そう無茶なことでもないと思いますよ、僕は」
 新説を披露したのはまたしても菅野祐介だった。
「ここで規則1の9項10項が活きてくるわけです。(規則1概要 9項10項参照)これは【犯人】のために作られた項目と言ってもいいでしょう」
 皆、手元の規則に目を落とす。最初に気付いたのは美結だった。
「そっか!【犯人】は途中退場できるンだ」
「そういうことです。つまり【犯人】は【代理人】なりの協力を得て偽装殺 人……要するに死んだふりができるってことですよ。構成員が死体を検死することはできないし、その死体もすぐに各自の部屋に片付けられてしまう。残された者は誰一人としてその人が本当に死んだのか否か確認することは出来ない。だから何人消えようが、【被害者】にとっては告発の成功率は1/9のままなんです」
「なるほどな、殺されたからって安易に容疑者圏外には出せないってことやな」と、感心する室町。
「しかも主催者側は逐一カメラのモニターで見張っているわけだから、死体を発見するのも僕たちより先になる。ややもすれば、構成員は死体に触れるどころか拝むことすらできないことだってありえますよ」
「まったくだ。むしろその確率の方が高いだろうな。で、少年どうする? やはりやめるか」
 平の問いに数馬は口を真一文字に結んできっぱりと言った。
「ううん、僕やるよ。何ていうかうまく言えないんだけど、僕強くなりたいんだ。絶対殺されたりしない!」
 そしてゲストの最年少、堀切数馬が拙い字で誓約書に氏名を記入した。
「みんな安心してよ。もし僕が【犯人】になったって誰も殺したりしないから。その時は諦めて天国に行くよ。残されるママには悪いけど……」
「おうおう、言ってくれるじゃねえの、ボウズ。どの道、お前みてえなチビ助におめおめ殺されるような奴なんざ、そこの婆さんくらいのもんだろうがな」
 石田サチコがそろそろと立ちあがる。それを見た松本が、
「お、やっぱ、あんたは帰るか? 賢明だぜ、婆さん。いくら老い先短い人生でも無駄に使うこたあねえ」
「いえ、そうじゃなくて……山口さん、ひとつお尋ねしたいんですけど」
「何か?」
「あたくしたちはどういう基準で選ばれてここに連れてこられたんですの? お金に困っている方はもっといらっしゃるでしょうに……」
 これに対して山口の応えは歯切れ悪かった。
「その件については残念ながらお答えすることは出来ません。ただ、このゲームを提示されて参加しようと決心する人はそう多くはないでしょう。たとえ金に困っていようが、退屈な日常の中で刺激を渇望していようが、やはり大概の人は不参加を選択するでしょう。しかし既に10人中8人までが参加を表明している。これは私どもの分析がおおむね正しかったことを示しています。今回は初めてということで代替要員を10人ほど待機させていますが、次回からはもっと少なくてもいいということになりますね」
「おい、山口さんよ。それじゃ答えになってねえぜ。まあ、俺はそんなこたあ別にどおでもいいけどよ。ただ【犯人】の立場でひとこと言わしてもらえれば、やっぱガキやババアを殺すってのはちょっと目覚めが悪いよな。生意気なデブや高慢ちきなインテリやさ男をバラすのにはこれっぽっちも罪悪感ねえけどよ」
「な、な、何ですって! あんたって、ほんと失礼な男ね!」と、巨体をゆすりながら抗議する美結。
「同感ですね。念のために聞くが高慢ちきなやさ男とは僕のことか?」
「ほかに誰がいるよ、菅野大先生。何でもお見通しって顔しやがって。あんた実は主催者側のスパイかなんかじゃねえの?」
「そのようなことは断じてありません」
 否定したのは菅野ではなく山口代理人だった。
 菅野が心底呆れたような口調でぼやく。
「君な、自分の浅い知能を基準に考えてたら皆インテリになってしまうだろ。だいたい主催者が構成員の中にスパイを送り込むことに何のメリットがある? 少なくとも僕は山口さんの言うことに今のところ……まあ、誓約書の件は別として、嘘はないと思っているよ。それに、君、さっき大見得切ったばかりじゃないか。お前ら毎日肉や魚食ってるんだろってね。君は肉や魚を食べるとき、それがオスなのかメスなのか子供なのか大人なのか、なんてことをいちいち考えているのか? だとしたらよっぽど奇特な御仁だな」
「ははっ、あんさん一本取られたなぁ」
 室町が腹を抱えて笑うと、恥をかかされた松本は顔を真っ赤にしてこめかみをひくつかせた。
「てめえは少し痛い目を見ねえと分からねえみたいだな」
 と、力任せに菅野の胸倉をつかみ拳を固めるが、当の菅野は全く動じない。
「やめてくれないか。服がのびるだろ」
「こいつ……」
 松本が拳を振り上げる。
「忘れるな。君はもう署名を済ませたんだ。構成員としての資格が既に発生している。もう一度規則を読んでみろ。【被害者】は【被害者】に危害を加えてはならないとなっている。つまり今君が僕を殴れば、抽選で【被害者】を引き当てた時点でペナルティだ。仮に運良く【犯人】を引いても同じこと。僕は自信を持って君を告発する。僕に危害を加えておきながらペナルティなしというのは【犯人】たる動かぬ証拠だからね」(規則6 被害者参照)
 菅野は親指と人差し指で拳銃の形を作り、その銃口を松本の眉間につきつけた。
「いずれにせよ、君は死ぬ」
 松本が赤ら顔を青色に変えておとなしくその手を離した。
 菅野が付け加えて言う。
「もちろん、もし僕が【犯人】だったら君はラッキーだけどね。だってそうだろ? 君の引いたカードが【被害者】で僕の引いたカードが【犯人】だったとしたら、他の人たちは僕か君のどちらかが【犯人】だということまでは分かるわけだが、君から見ればいくら足りない脳みそでも僕が【犯人】だということは必然の理というわけだ。ま、あくまで僕が【犯人】だったらの話だがね。それとも賭けてみるかい、1/10の確率に」
 さしもの松本もそこまで無謀な男ではなかった。彼はすごすごと席に戻った。
 ふと気がつくと石田サチコがペンを取っていた。
「あ、正気ですか、おばあさん。一体どういう心境の変化です?」
 螺子目が口をあんぐりあけて親指に朱肉をつけるサチコを見る。
 すると平が螺子目をなだめるように言った。
「まあ、いいじゃないか。この中に正気の人間なんていないんだ……おっと、失礼。一人だけいたな。お嬢さん、あんたはどうする? 正気の世界に戻るか」
 平の呼びかけにずっとうつむいたまま息を殺していた森岡千夏が端正な面を上げた。
 そして消え入りそうなか細い声で囁いた。
「正気の世界なんてこの世にはもう何処にもありません。私もゲームに参加します。それともしこの誓約書を失踪宣言として使うのなら私には必要ありません。だって私がいなくなっても、私を探す人なんていませんから……」
「それは私も同じだな。天涯孤独の身の上なものでね。や、その辺の調べはとっくについてるんだろうがね」
 と、皮肉まじりに言ったのは平一である。
 千夏が署名を終えたところで【代理人助手】が誓約書を回収する。
「さて、夜もふけてまいりました。全員構成員となったところで抽選に移りたいと思います。その前に皆さん、お互いの名前も知らないのでは何かと不便でしょう。こちらでプリントを用意させていただきましたのでどうぞご覧ください」
 山口代理人の指示により構成員にプリントを配る【代理人助手】。見るとプリントには館2階客室の見取り図が描いてあり、各部屋の10人の顔写真と名前が記されている。
「ご丁寧なこった。まるで全員参加するのが分かってたみてえな用意周到ぶりじゃねえか。まあいいや。早いとこ抽選してしまおうぜ」
 せかす松本に【代理人】がゆっくりと頷く。
「分かりました……石川」
 命じられた【代理人助手】の石川という男が、持参したアタッシュケースをテーブルの上に置き、中からカードと封筒の束を取り出した。代理人がそれらを一同に見えるように掲げて見せる。全員が身を乗り出して、それらを見る。
 カードと封筒が10枚づつ。封筒は全部同じ色、形状をしているが、カードの方は違っていた。グリーンを基調とした涙を流して泣いている男の絵柄のカードが9枚に対して、赤を基調とした眉を吊り上げ怒っている男の絵柄のカードが1枚きりだ。
「説明するまでもないでしょうが、こちらのグリーンのカードが【被害者】、赤いカードが【犯人】を示します」
 山口代理人は10枚のカードをテーブルの上に裏返しにしてかき混ぜた。裏側のデザインは皆同じで、もうどれが【犯人】のカードなのか分からない状態にある。次に充分にシャッフルしたカードを1枚づつ封筒に入れる作業に移る。丁寧に糊付けされたその封筒は透かしてみても中までは見えそうもなかった。
「それでは、どうぞ、封筒を1枚づつおとりになってください。そしてその封筒は必ずお部屋にお戻りになってから開けるようにしてください。この場で開いてうっかり誰かに見られでもしたら大変なことになります。たとえ見られなくても表情でばれる可能性もありますので。以上で説明会を終わりますが、規則1の4項に記載のとおり部屋に戻られたら【被害者】の方はゲーム開始の0時まで部屋から出ることはできませんのでご注意ください……」
「ふん、いきなりペナルティじゃ間抜けだもんな。忠告ありがとうよ、代理人さん」
 松本は目の前の封筒を気にかけながら山口に礼を言った。
「僕、お腹すいたよ。何か食べるものないの?」と、まるで緊張感のない発言は堀切数馬だ。
「今夜に限りお部屋のほうに軽い食事を用意しておりますので、どうぞ御召し上がりください。それと、これも規則に謳っておりますが、明日からの食事などはすべて構成員の皆さまに賄っていただくことになっておりますのでよろしくお願いします」
「いやあ、助かるなあ。俺もめっちゃ腹ぺこやで。早速メシにありつかな。おっと、その前にカードを引いてと……」
 室町が一番に封筒に手をかけた。声の震えからして無理に明るく振舞っているのがみえみえだ。
「なあ、どうでもいいけどメシに毒が盛られてるなんてこたあねえだろうな」
 と、危惧する松本に山口が苦笑して、
「それはありません。まだゲーム開始前ですし、なにより【犯人】がまだ決まっていないのですから」
「もうすぐ11時か……さあ、皆さん、時間もないことだし早くカードを引いてしまいましょう。もし【犯人】を引いてしまったら忙しくなる」
「え、どういうこと?」
 螺子目にその言葉の意味を問う遙。螺子目のかわりに答えたのは平だった。
「今から【被害者】が部屋にこもっている時間は明日の0時まで。あと1時間ぐらいしかない。この間に【犯人】は【代理人】に指示すべきことは指示してしまわないとならん」
「えっと、そんなに急がなくてもいいんじゃないの。これから三週間もあるんだし」と、数馬が不平を漏らす。
「いや、何はなくともこのゲームは先手必勝。これからゲーム開始までの【犯人】の行動はかなり重要だよ」と、菅野が意見する。
「そうね、のんびり寝てなんかいられないわ。0時過ぎたらいつ寝首を刈られても文句は言えないんだから」と、これは美結の台詞である。
「何だ何だ、あんたら結構楽しんでンじゃねえか?」
「お互い様だろ、松本浩太郎君」
 菅野が覚えたばかりの松本の名をフルネームで呼ぶ。
 思い思いに封筒を手にする面々。その中で石田サチコが珍しく全員に向かって一つの提案をした。
「皆さん、ちょっと聞いてください……あの、やはりあたくしたちは【被害者】になる可能性が高いわけですし……どうでしょう、0時丁度になったら皆一緒にこの部屋に戻ってきませんこと? とにかく一人きりにならないようにさえしておけば、ある程度は安全だと思うんですの」
「そんなこと言っといて、ばあさんが【犯人】になったりしてな。ったくよ、仲良しこよしじゃねえっつうの」
 予想通り真っ先に難癖をつけてくる松本。しかし大概の者はこの年長者の意見に同意していた。何と言ってもやはり死ぬのは怖い。金も欲しいがなにしろ命あってのもの種だ。
「そうだな。賢明な判断だろう。少なくとも今夜は1階のリビングあたりで交代に寝るってのが無難だな」
 人間嫌いの平もあまり気が進まないながらも、いくらかでもゲームを有利に展開させるためにと思い、そんな風に言った。
「平さんの意見には僕も賛成です。僕たちは自分の部屋の鍵を持っているから一見そこが最も安全な場所と思いがちですが、むしろそれは逆なんですよね。【犯人】にはマスターキーが与えられるわけだから、部屋の鍵など何の意味も持たない」
「へっ、あんたも抜けてるねえ、菅野さんよ。部屋には大きな机があったぜ。あれをドアにおいてバリケードを作っておけばいいじゃねえか」
「君にはほとほと呆れるよ、松本君。だったらそうすればいいさ」
 松本の思いつきは菅野によってあっさりと却下された。
「部屋のドアはどういう構造だったか覚えてるかい? 外開きだよ。そして部屋にあった机の高さはせいぜい1メートル。つまりバリケードなどたいした意味がないってことさ」
「あ……」
「あ、じゃないわよ。ホントにあんたバッカねえ。脳みそまで筋肉でできてんじゃないの」と、美結が露骨に軽蔑の眼差しを松本に向ける。
「るせえ。人をバカバカ言うんじゃねえ、このデブが」
「ああ、またあんたデブって言ったな! 絶対殺してやるから」


 やがて構成員たちはちりぢりに自室に戻っていく。最後の封筒を取ったのは森岡千夏だった。千夏を除く9名は二人の【代理人助手】の監視のもと、既に食堂を出ていた。そこに残っているのは山口代理人と千夏のふたりだけだ。人がいなくなったせいで急に食堂が広く感じられる。
「あの、山口さん」
「はい?」
「私、ひとこと言っておきたくて」
「何でしょう?」
「あなたは参加者の人選を誤ったわ」
「どういう意味ですか」
「あなた、こんな人の道に外れたゲームが許されると思っているんですか! 人が人を殺す……それも、お金なんかのために」
 千夏は先刻のおどおどした様子は微塵もなく、むしろ胸を張って堂々と山口と対峙していた。
「私は最初、このゲームに参加するつもりはありませんでした。でも、何ていったらいいか、虫の知らせ……予感とでいったらいいのか、話が来たとき、行かなければならない。と、そう思ったんです。来てみれば案の定、こんな人として許しがたい、見過ごせない犯 罪行為がゲームの名のもとに行われようとしている。さっきの人たちは決して悪い人たちではない。欲望に足元をすくわれるのは人間としての悲しい性です。けれどもそれをお膳立てしたあなたたちはどうしても許せないんです。何て卑劣な……人の弱みにつけこんで……」
「だったら、あなたはなぜ署名したんです? あなたも欲望に負けた哀れな子羊なのですか」
「壊すためです。私はこのゲーム、命にかえても妨害してみせます」
 千夏の熱弁に今まで低姿勢で通してきた山口が初めて悪魔のような笑みを浮かべた。声のトーンも一転してドスのきいた低い声に変わる。
「できますか、あなたに? 規則を破れば即刻死ぬんですよ。規則の縛りを受けながらどうやって妨害します?」
 山口はちらりとビデオカメラに眼を向けた。この場面がちゃんと記録されていることを確認しているらしい。彼はまるでそこまで予測していたかのように落ち着き払っている。
「まあ、いいでしょう。せいぜい頑張ってください。あなたの妨害工作を楽しみにしています。私も、上の方々も」
 千夏は切り札だとばかりに、山口の目の前にカードの入った封筒をつきつけた。
「このカードが【犯人】だったら簡単なことよ。私が死ねば【犯人】不在でゲームオーバーだもの」
 しかし山口はあくまで余裕の体を崩さない。
「ほう、だがしかし、それでは根本的な解決にはならないでしょう? あなたがここで死んでしまっては、またゲームは繰り返されていくだけのこと。あの9人を一時的に助けたにすぎない」
「…………」
 千夏は言葉をなくしムッとして食堂を出ていった。
 山口は正確に時を刻みつづける自慢の腕時計を見た。
 午後11時。万事予定通りだ。
 一人きりになった山口はインカムをとおして【代理人助手】に次のように命じた。
「森岡千夏が部屋に入ったら館内放送を流せ。全員入室完了したと……」
 そう、その放送を聞けば、矢も盾もたまらず、あの10人の中の一人がやってくるはずなのだ。
 【犯人】が……
 ゲームの共犯者たる山口のもとへ……


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