第3話 11月25日
「やあ、おはよう、猿渡さん」 げげっ、またいるよ、こいつ。 そうなのだ。また現れたのだ、あの男が。 ゴミオヤジこと蟹江さんが── あれからというもの、あたしがゴミを捨てにいくたびに必ずいるのだ。 これはもう軽いストーキングだ。 まいったな。あたしは相当このオジサンに気に入られてしまったらしい。 「聞いてくださいよ、猿渡さん。またウチの娘がね──」 蟹江さんは今日も今日とて、数日分の愚痴を吐き出しはじめた。 ホントもう、この人の陰険な愚痴を聞くのもいいかげん疲れてきたよ。 娘さんへの鬱積っていうか悪口がどんどんエスカレートしていって、もはや聞くに堪えないところまできているし。 「──また無断外泊ですよ。だいたい親の心配というものを」 でも無下にはできないんだよなあ。 ああ、ひたすらソトヅラの良い自分の性格が恨めしい。 「──一人娘だと思って甘くしているとつけあがるし」 でも、もう限界だ。 言ってやる言ってやる、今日こそはビシッと言ってやる。 「──いなくなってしまえばいいんだ、あんな娘!」 有言実行戦士、猿渡響子。しつこく付き纏う蟹江さんに強い口調で言ってやりましたとも。 「そんなに娘さんが煩わしいんならゴミにでも出しちゃえばいいじゃないですか!」 あたしの剣幕にポカンと口をあけている蟹江さん。 あちゃー、ちょっと言い過ぎたかな。 やがて、蟹江さんが思いもかけずこう言った。 「ねえ、猿渡さん、人間って燃えるんですかねえ──」 あ、あの、それって── 「いやね、人間を捨てるときはやはり燃えるゴミに出すのかなあ、って」 「蟹江さん、じょうだんやめ──」 ヤバイ。 目がマジです。 ──ま、まともじゃないっす。 つかそれ犯 罪でしょ。 ヤバイヤバイ。 もうイヤだ。 もうイヤだ。 もう関わってらんないよ! |
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