第5話 12月11日
すぐに捕まるものと思われていた蟹江さんが未だに逃走中ということを新聞で知った。 口さがない近所のおばちゃんたちの間では、もうすでに死んでいるのではないかという憶測も飛び交っている。 まっ、どうでもいいや、そんなこと。 あたしはトーストにマーマレードを塗りながら、部屋の隅に置いているゴミ袋に目をやった。 また溜まっちゃったな── ゴミ捨て場から蟹江さんの姿が消えたことは大歓迎なのだが、それからというものゴミ捨て場が散らかっててしょうがない。あの人が管理していないと、こうも酷くなるのかと呆れたものだ。 ゴミの分別はしない。 収集日を守らない。 粗大ゴミは捨てる。 カラスが荒らしていく。 もはやどうしようもない無法地帯。 あの人を煙たがっていたのは、どうやらあたしだけではなかったようだ。 いずれにせよ── 完全に秩序は乱れた。 一度崩れたものはもう元には戻らない。 そういうことだ。 そういうことなんだ。 |
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