振り込め詐欺にご用心

 




【振り込め詐欺にご用心】
(デンデン、テレツクレテツク〜)
>寄席の出囃子
え〜、毎度ばかばかしいお笑いでご機嫌を伺いたく――
なんでも〈振り込め詐欺〉ってえのが後を絶たないそうでして。
最近じゃその手口の4割が〈わいせつ〉名目で最も多いゆすりネタになっているんだそうですな。
簡単に言ってしまうと「おたくの息子が女子高生に痴漢をはたらいた。ついては示談金を払いたまえ」とまあ、こういうものだそうでして。
しかしなんですな、オレオレ詐欺と呼ばれていた頃は〈交通事故〉ってのが多かったものですが、なるほどたしかにわいせつ行為をはたらいた身内がいたとなると、家族に凶悪犯がいたってのと同じくらい世間様に対して顔向けができません。恥ずかしい、肩身が狭い、あたしゃもうお天道様の下は歩けないよ、ってなことにあいなるわけです。
〈必要は発明の母〉なんて申しますがまさにそれ。
近頃じゃ劇場型といって身内や警官、弁護士、雑誌記者などを装って〈元祖どっきりカメラ〉顔負けの実に凝った騙しを仕掛けてまいります。
まあ冷静に考えればね、痴漢なんてものは交通事故と違って示談金で済むという類いのものではないでしょうし、ましてや支払いに緊急を要するってなものでもないわけで何がなんでも振込みにする必要もないのですが、人間冷静さを欠いてしまうとそんなこともわからなくなってしまうものなんでしょうなあ――
「あーもしもし、○○さん? あんたの息子ね、いい年して小学生にイタズラしたの。イタズラっていってもああたアレだよ、性的な。そうそうそれですよ。もうねお父さんカンカン、すごい剣幕で怒ってらっしゃる。警察に突き出して死刑にしてもらうって無茶言ってきかないんだ。えっ、私? 私はその娘の叔父なんですがね。ほら、こういうのが公になっちゃうと姪っこもそれなりに傷つくわけでしょお。だからここは大人の取引きで手打ちにしましょうって、今やっと兄を説き伏せたところなんですから。ホント感謝してもらいたいですよ、まったく。あのだからねえお母さん、示談金五百万、耳をそろえて払ってくださいよ。ええ、もちろん今日中にですよ。お母さんあのね、スグに支払うこと、それが誠意を見せるってことなんじゃないのかなあ。少なくとも私はそう思うなあ」
とまあ、下手人は一方的にまくし立てるわけですな。
で、先方がようよう一息ついたところでお母さんやっと声を発します。
「あのお、ウチの息子がそんなことをするはずが……」
これで間違い電話だったりしたら相当な間抜けでございますが電話番号は間違っておりません。久しく会っていない都会で暮らす息子がいることもぬかりなく調査済みでございます。
「ああたね、そう思ってるのは親ばかりですよ。息子さんが、つまりその変態的な趣味を持ってたのは信じがたいところでしょうけども、現実はしっかり受け入れてもらわないとねえ」
「いえあの、それは知ってるんです。息子のその、アブノーマルな趣味のことは……」
おっ、アブノーマルときたね。なんでもかんでも横文字にすりゃあいいってもんじゃないんだよ、どうも。
「あっそう? なんだ知ってたんだ。だったら何なのかな。息子は少女趣味だけど犯 罪には手を染めないとでもいいたいわけですか」
「いえ、そうではなくて……」
「あのね、私もいつまでも穏やかではいられないよ、お母さん。わかってるのかい、こっちは被害者なんだよ」
「いえ、でも――」
「なんだいなんだい、言いたいことがあるんならハッキリ言いなさいよ」
「はい、あのう」
お母さん、電話の向こうでなにやらモジモジしながらこう言うわけですな。
「実はウチの息子、ホモなんです」
おあとがよろしいようで。
(デンデン、テレツクレテツク〜)

はい、なんちゃって落語終了〜
とりあえずブームに乗ってみる節操のないヒカコラです、こんにちは。
はいそこ、全然オチてないじゃんとか言わないように。
まあしかしアレですね、首尾よく詐欺を撃退できれば上出来ですが、まんまと騙された親御さんもたくさんいるわけじゃないですか。
それでも、お母さんのほほんと台所で緑茶なぞ啜りながらいうわけですよ。
「お金は騙し取られたけれど息子が無罪でああ良かった」なんてね。
でもって、後になって騙された顛末を母から聞いた息子は大いにむくれますわな。
「交通事故とかならともかく俺が痴漢なんかするわけないだろ。見損なわないでくれよ」と。
こうなるとこの親子、家庭崩壊まっしぐら。
世間様に顔向けできてもご子息様には一生顔向けできなくなるわけです。
振り込め詐欺、真の恐怖は詐欺られた後からじわじわ効いてきます。
おあとがよろしいようで。
that's all(だからオチてないって!)


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