LESSON6 トモくんの続柄
トモくんの家族は本当の家族ではない
ただ一緒に暮らしていた扶養者に過ぎない
それを知ることからボクらの関係は始まった
ボクと彼女の位置関係は平行でも垂直でもない
ねじれの位置、だっけ?
まさにあれだ
4年前
トモくんはお昼休みの職場へボクを尋ねてやってきた
「××って方、こちらにいらっしゃいますか?」
「××はボクですけど・・・」
なんだろうと訝しげに思いながら応対に出る
ボクは彼女を見た
怒っているふうでもない
どうも苦情とかではないらしい
職場の先輩が興味深げにこちらを見ている
どうせあとで冷やかしに来るに違いない
リンちゃんというものがありながら他の子に手を出すとはどういう了見だとか何とか・・・
うざったいと思いつつ、「やだなあ、先輩。さっき初めて会った人ですよ」なんて笑いながら頭のひとつも掻いてみせる自分が見えた
そんな自分に嫌悪を感じる
あ、リンちゃんというのはボクの彼女のことだ
しかもかなり公認の
ゆくゆくは結婚も考えていた
特別彼女が好きなわけではないし、家庭に憧れがあるわけでもない
ただ、周りがみんなそうしているから自分もいつかはということだろう
いや、彼女を好きではないというのは語弊がある
世の女性の中では誰よりも大切な存在であることは疑う余地もない
ただ、なんというか静かなのだ
心が、弾んだり、燃えたり、滾ったりしない
それがボクという人間なのだ
「この人を知っていますね」
彼女は一枚の写真をボクの前に置いた。
「ええ、これはボクの父ですけど・・・あの、あなたは?」
「一緒に移っているのがアタシです」
「え・・・」
確かにその写真には父と手を繋いでいる小学生くらいの女の子が写っている
まるで親子のように・・・
ボクはしげしげと写真と彼女を見比べる
おそらく10年は前の写真だが、似てなくもない
彼女は真正面からボク見つめて抑揚のない口調でいった
「はじめまして、お兄さん」
それがトモくんとの出会いだった
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