LESSON9 トモくんの不在
古風な雰囲気を漂わせるリンちゃんは物静かで口数が少ない
よく人からは、ふたりはお似合いだねといわれる
確かに仮初めのボクと仮初めのリンちゃんは、良いバランスのような気がする
でも彼女は喋らないぶん、その目やしぐさはとても多くを語っている
わたしだけを見ていて
わたしだけを見ていて
そんなふうにボクの領域を一言も発せず侵してくる
ボクの生活も
ボクの心も
ボクのすべてを
みんなみんな・・・
頬杖をついて上目遣いにボクを見るとき
ボクの背中に戦慄がはしる
雄弁家も考えものだが、訥弁家もまた考えものだ
今ボクは、そんな彼女の墓前に線香をあげている
人生ってやつはホントいきなりだね
風邪ひとつひいたことのないリンちゃんがあんなつまらない事故で若い命を散らすなんて
あれからもう3年になるんだ
しばし止めていた煙草に火をつける
そう言えばリンちゃん、煙草のにおい嫌いだったね
ボクには一度も言ったことなかったけど、ずっと前から知ってたよ
君の考えていること、思っていること
なんでも分かるんだ
でも、ボクは煙草を止めなかった
ささやかな抵抗ってやつだね
リンちゃん、元気ですか?
そっちはどう?
三途の川の渡し賃っていくらが相場なの?
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