Written by hiro  

 ある朝、目がさめると頭に何かがあたった。それを見てオレは心底驚いた。
 それは腕だった。脈もあり、温かい・・しかし、一番驚いた事、それは「壁から生えている」事だった。
 腕は動かず、壁からまっすぐ伸びていた。だが、硬いと言う事ではなく、それは生ある人の腕の感触だった。

 ひっぱったり、壁との境目を調べたりした・・が、何も無かった。

 とりあえず、仕事へ向かう事にした。オレの住むこのマンションは親の遺産で、1〜2億はする。
 独身のオレはマンションを売れば仕事をしなくても十分な生活ができるのだが、それはなんとなくイヤだった。
 行きの電車の中でも、会社でも腕の事を考えていた。そのため、上司にしかられたが、それでもまだ腕の事が忘れられない。
 ようやく仕事が終わり、帰ってみるとまた驚いた。

 腕が二本になっている。両腕がそろってしまったのだ。オレは警察に電話した。
 だが、ありのままを正直に話すと、
「壁から腕が生えてきた?何を言ってるんですか?」
 と言った返事。切られた。途方に暮れるオレのそばで、腕は動かずにいる・・・・・。

 そんな生活が二、三日続くうちに、また変化が起こった。
 脚だ。今度は両脚いっぺんに生えてきた。少しため息をつく。
 もうイヤになった。思いきり叫んだ。だが、管理人のオレに文句を言うやつもいない。
 少し落ち着き、寝ることにした。「明日になったら消えてくれ」と願いながら。半ばヤケクソだった。

 シャー、シャー、シャーという音で目が覚める。だが体が動かない。ベッドに縛られている。
 どういう事だ?そう思い音のほうを見ると、台所からだ。
 恐ろしくなり声を出そうとする。が、猿轡をされ喋れない。
 ギーッという音で、ドアが開いたのがわかった。で、台所から来たヤツを見た時、本気で驚いた。

 腕だ。あの腕だ。しかも身体がある。完璧にくっついている。
 オレが驚いた他の理由、それはヤツの首から上が無い事。
 そして、オレがあまり使わない包丁を持っていた事。さっきの音は、包丁を研ぐ音だったのだ。
 首に包丁が当てられたとき、オレは思った。
 (消えて欲しいって思ったのはお互い様だったのか・・・。)

 切られたオレの首がやつの身体に乗せられた瞬間、オレの意識は急激に薄れ始めた。
 まるで、腕と入れ替わりに壁に吸い込まれる様に・・・。
 


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