別れ……

別れ……


Written by 夏秋花  

「離別」

絆……。
終わるはずなんてなかった。終わらせてほしくなかった。
僕は何をするでもなく、ただ茫然自失に空虚な空を眺めていた。
空は黒かった。
もはや僕の為せることは皆無に等しかった。


力のない僕。一人では生きられない僕。時々意地悪な僕。
家族も、よく覚えてないけどたぶん迷惑をかけた。
そう言えば、よくペットを苛めていた。あいつはなかなか面白いやつだ。引っ張りすぎて躓いて、血を流していたこともあった。
「今ごろ……こんなことを思い出すなんて」
僕は自嘲気味に笑った。


酷く喉が渇く。
水を飲む、ゴクゴクという爽快な音だけが僕の満足感を高めてゆく。
「………もう一杯」
飲む、飲む、飲む。心の渇きが身体的に何か影響を与えているのだろうか。
焦りから来る喉の渇き。それは狂おしいほどまったりとして美味しい。
今日の“水”は何故か白濁していた。でも、構わない。
不思議な感覚。溢れる衝動。零れる涙。
これで終わりだなんて、酷すぎる。
僕は慟哭した。だが、それに答えてくれる者はいない。
「どうしてこんなに世界が暗いんだよ!」
覆われている何かが邪魔で仕方がなかった。
独白した。と同時に僕に迫る音が聞こえてくる。身震いした。
「…………………ッ!」
次の瞬間、突然僕の身体が浮いた。
いや、僕が浮いたのではない。家そのものが浮いていた。
空中ではぐらぐらと傾いていて、非常にバランスが悪い。僕は咄嗟に床を握り締めて堪えた。
何がなんだかわからない。わけもわからない。
ただ……はっきりと『これが最後』だってことがわかる。
「嫌だ、怖い、助けて!」
漠然と迫る恐怖。助けを乞うても何も出ない。
ドオオオオン!ドン!
すごい音とともに僕と僕の家は地面に突き落とされた。そして何かが締まる音。
痛みで思わず叫ぶ。叫んだ拍子に舌を犬歯で噛んでしまった。泣きっ面に蜂とはまさにこのこと。
突き落とされた後の地面は、先ほどの暗さよりも輪をかけて暗くなっていた。
『闇』。
はっきりと見えなくなった自分の輪郭。夜目の利かない自分を呪う。暗順応さえしてくれない。それにこの地面は異臭がして気に入らない。加えてずっと猛獣の鳴き声のようなものが響いている。外からそれを見たことはあったけれども、猛獣の腹の中でこの猛獣の声を聞いたのは生まれて初めての経験だ。
逃げたいけれど、退路はない。
「ここまで、か。僕は……」
僕は落胆した。もう、足掻く力さえ残っていなかった。

猛獣はゆっくりと歩き出す。そしてだんだん加速していって、僕からは見えないけれど、今は僕の数倍の速さで走っているに違いない。
ごめん、今までありがとう。そして、さようなら。



「決別」

×月××日。今日、俺はついにペットの太郎を保健所に送り込んでやった。無理やりダンボール箱に詰めて、保健所の車に放り投げた。キャンキャンと泣け叫んでたんだけど、いい気味だとしか思わない。
まったく、よくもいつもいつも俺に迷惑をかけてくれたぜ。「お前は何様?」って感じだね!
この間なんかよ、思いっきり引きやがって、ずっこけて膝擦りむいちまったよ!でかい図体してんだから、ちょっとは考えろよな!
しかし、これからはアイツなしの気ままな生活が送れるぜ!



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