そして、永久(とわ)に時が止まった

そして、永久(とわ)に時が止まった


Written by zon  

「幸せだな」
僕は、なんとなく思いついた言葉を口にしていた。
愛する人と過ごす、のんびりとした日曜の昼下がりである。
場所は公園、ジャングルジムで楽しげに遊ぶ子供たちの声が風に乗って小さく聞こえてくる。
「ねぇ、ルリヲ?」
傍らのモヨコが唐突に口を開いた。
「時間が止まればいいなって思った事、ない?」
「何だい?突然」
僕は平静を装った。
モヨコの言葉の意味が痛いほどに分かっているからだ。
明日になれば僕は帰らなければならない。
仕事が山積みにされた生活に・・・・
僕たちは遠距離恋愛中なのだ。
「そうだな・・・このまま時間が止まれば、モヨコと、ずっと居られるのにな」

モヨコが嬉しそうに肩を震わせて笑い出した。
「やっぱりルリヲも、そう思ってたんだ」
声も出せずにいる僕に向き直りモヨコは言った。
「アタシ、時間を止める方法知ってるんだ」
何を?と、思う間もなくモヨコは自分のポシェットの中から『あるもの』を取り出した。
「ピストル?」
「そうよ、これを使うの」
モヨコは使い慣れた仕草で僕の方に銃口を向ける。
まさか、時間を止める方法って?
モヨコは躊躇いもせずに引き金を引いた。
パンッ! 妙に小気味のいい音が響いた。

・・・・・・・生き、てる?
僕は、かすり傷ひとつ負わずに生きていた。
「オモチャだったの?」
満足そうな笑みを浮かべるモヨコは首を振ると僕の背後の空を指さした。
僕が振り向くと同時に大音量の悲鳴が響き渡った。
空には巨大な液晶画面が浮かんでいて、その向こうでは顔に穴を空けた男が血塗れでもがいている。
「・・・・・・・あれは?」
「神よ、正確に言えば作者。これで時間は止まるわ、永遠に」
僕はモヨコの言葉で真実を知った。
そして、永久に時が止ま――――――
 


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